ある意識と無意識の接点(1から8のまとめ)

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意識と無意識の接点である

水の世界の入り口の光景の一つです。

ここから続く先にバーバラという

嫉妬や憎悪を濾過する者が住んでいて

言葉の欠片を運ぶ無数のメダカたちが

泳いでいます。

ビジョンなので、詩のような形式に

なっています。

このような光景は、素早く書かないと

消えてしまうので、詩のような形が

向いていると思います。

この光景を見ているのは、「いもりたけとし」です。

これは、私のスピリチュアルな世界の入り口です。

 №1、動き出した物語

葡萄の様な目玉の一つが割れて

僕はちょろちょろと泳ぎ出した。

様々な記憶を湛えた冷たく透き通った水は、

あらゆる世界と繋がるための言葉を運ぶ血液だった。

目を覚ましたばかりの意識は、

まだ現実に存在しているわけではなく、

その意識だけが、区切られた範囲の水と

その周囲の地面にひっそりと流れ付いていく。

やっと生えそろったばかりの手足を必死に動かして

陸にあがろうとする意思を挫くように、

誰かが優しく水に誘うから

生まれ落ちた意識の多くは、

また吸い込まれて消えていった。

僕は押し潰されそうな不安を抱えながら、

辿り着いた水辺に定着することを試みる。

僕の存在の形はイモリだった。

再びこの世界に存在することが可能になった時に

新たに持ち込まれた僕は、

僕自身も全く知らない自分だった。

この体に落ち着くまで、僕の魂は眠れずに

自分が二人いるかのような日々が続いた。

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№2、石に彫られたふくよかな女

山間の小さな村にあった僕の実家には

身内すら忘れてしまっていた小さな祠と

小さな泉があった。

様々な事情で幼い頃から家族と離れて

暮らしてきた僕は、たまに帰省しても

家族と話すことは気恥ずかしくもあったし

億劫な時間だったから、広い敷地の隅々を

詳細に見て回ることで時間を潰した。

この辺りは水の豊かな集落だったから、

あちこちに水路が通っていた。

幅が1mくらいの水路もあれば、

道路と勝手口の間を50㎝弱のものが

流れていたりしていた。

 勝手口から家の壁と水路の狭い間を

サワガニの様に体を横にしながら移動していると、

今は使われていない風呂の焚口があった。

焚口の周囲は、大きくなり過ぎた木々に囲まれて、

晴れた日でも薄暗く不思議なほどジメジメしていた。

誰も彼もがこの場所の記憶がないかのように、

近づかなかったし話題にもならなかった。

実家の近くに用があるときは、家族に会わなくても

この場所を覗くことが習慣になった。

伸び過ぎた木の周囲は、落ち葉が堆積して

下の方はもう土になっていた。

砂場で遊ぶ子供みたいに、落ちていた細い枝を

手に取って無造作に落ち葉を掘っていると

大きなゴロンとした石が見えてきた。

面白くなって土から掻き出すと、

幅と奥行きが20㎝くらい、

高さ30㎝ほどの石だった。

そこには、何やらふっくらとした人らしき姿が

浅く掘り込まれていた。

№3、こっそりと穴を掘る

石を掘り出して気分が盛り上がってきた僕は、

木の周りの落ち葉を熊手で掻きはじめた。

急に落ち葉の布団を剥がされて、色んな虫たちが

ザワザワと移動した。

乾いた落ち葉だけを払うように隅にやると、

一段と湿った場所があった。

薄っすらと水が溜まっている。

無造作に足を踏み出すと、思い切り沈み込んだ。

慌てて引き抜いたが、買ったばかりの靴は沈んで

中まで泥まみれになった。

落ちている枝を拾ってきて、ぬかるんだ地面の

あちこちに挿し込んで慎重に歩いた。

そんなに広くない範囲だけが極端に深く刺さって、

底に当たらない。

好奇心に駆られて、ぬかるんだ土を少しずつ

すくい取っては捨てた。

次第に滲み出る水が増えていったから、

納屋にスコップを取りに戻った。

直感的に簡単に終わらないと思い、木の板で

蓋をするともう一度落ち葉で隠した。

小さなぬかるみだったから、工事現場で使う様な

スコップは扱い難かった。

持ち手の長い小さなスコップをホームセンターで

購入して、穴掘りをするためだけに、

こっそりと実家に通うようになった。

№4、美しいものとイモリ

僕は憑りつかれたように泥水を掻き出すことに、

夢中になっていった。

土よりも水が多くなり、濁った水になった。

そしてついに澄んだ水だけになった時に、

それが小さな泉であることに気が付いた。

泉から溢れた水はトカゲが歩く幅くらいの

小さな筋を作って緩やかな斜面を歩み始めた。

その後を辿ると、腰ほどの高さに生い茂っていた

草むらに消えて行った。

渇望にも似た感情が湧き起こり、水の行き先を

知らないままで済ますことを許さなかったから、

強引に茂みの中に踏み込んでいったけれども

トカゲの幅ほどの小さな流れを

見いだせるわけもなく

気が付いた時には、50㎝ほどの幅の水路で

倒れていた。

網の目のように張り巡らされた水路に

落ちてしまったのだ。

幸い大きな怪我はしなかったから、これまで通り

泉のことは誰にも話さずに済んだ。

やっと綺麗に出来た泉の脇に、何かしら

彫り込んである石を置くと妙に収まりが良かった。

泉は呼吸をするみたいに、時折小さな空気を

水面に吐き出していた。

僕は蓋をするべきかどうかかなり真剣に

悩んだけれども、自分以外にこの泉に

気付く者がいるとは思えなかったから

そのままにして、その場を後にした。

それからしばらくすると、僕という意識は、

毎晩のように泉に通うようになった。

家族が談笑する光景を窓越しに見ながら、

壁をヤモリみたいに這うようにして泉を目指した。

窓越しに見る家族の談笑は、子供の頃、

心の底から家族に馴染むことが出来なかった

気持ちの距離感と驚くくらいそっくりだった。

家の壁を這いながら移動して、母屋の裏に回り込んで

離れに向かう。

居心地の悪さは、それに見合った物理的な距離を

常に求めていたから、高校を卒業すると

すぐに家を出た。

 それ以来僕は、美しいものを求めてきた

つもりだった。

明確な基準があったわけではなかったけれども、

漠然と幻想のような美しい何かを激しく求めていた。

そう幻想だった。

現実には、存在しない救いのような何かを

美しいものとして、漠然と憧れ続けていたのだ。

そのことに気が付くまでそんなに

時間はかからなかった。

ただ美しいものなど自分勝手な思い込みだったと

自覚したときに激しく傷ついたことは

間違いない。

どんなに罵られるよりも、根本的に存在の基盤が

揺れて崩れ去っていったことを覚えている。

足元の地面が立っていられないほど激しく

揺れることがあるのだと初めて知って恐怖した。

毎日、泉に通っている間に忘れていた感覚が次々に

押し寄せては消えていった。

泉に辿り着くと、小さな泉を囲うように置いた

小さな石の上に腹這いになって乗った。

水面を見詰めると、小さな気泡が

プクプクと上がって来る。

泡がとても気になるようになった僕は、

泉に訪れるたびに、水の中を真剣に

見つめるようになっていたから、

水面に映る自分の姿にまったく気が付かなかった。

トカゲの様な形の褐色の体の腹側はオレンジ色が

不思議な模様を描いていた。

両の手も足も大きなグローブでもしたみたいに

広がっていた。

小さな石の上に腹ばいになって気が済むまで

水面を見詰めると、トカゲが通れるほどの水路を

通って実家から15キロほど離れた街中の

一人暮らしのアパートのベッドに帰って眠った。

№5、イモリ君

意識の器から気持ちが静かに氾濫する。

溢れだした思いは、滴り落ちて、

網状に広がった水路を覆う。

そのたびに流れは新しい連続と断絶の配置を

置き換えながら泉と繋がっていった。

僕が僕であるために溢れ出していった気持ちは、

不要な記憶、厄介な感情とか

それなりに生きていくために

邪魔なものばかりだった。

それらは、捨て去ったからといって、

なかったわけではない。

思い出せないからといって

消えてしまったわけではない。

入り口も出口もない水の溜まり場で、

ただじっと何かを待っているのだ。

僕が忘れ去ったまま死んでしまっても、

その水の溜まり場で植物が育ち、

小さな生き物たちに食事を提供した。

人の目には見えない愛が交わされて、

より小さな者たちの揺り籠になった。

僕が捨て去った世界で命が鼓動していた。

僕以外の誰かが捨てた水の溜まり場と

重なるように、氾濫することもあった。

それらの一つ一つが永続的に同じ形を

していることはなかった。

そこに生まれた生き物たちは、僕と

異なる意識を持って移動した。

氾濫してこぼれていく気持ちを

意図して流す者もいたけれども、

本物でなければ、この世界で再び

命を持って動き出すことはなかった。

本物であれば、時代に関係なく

どこかに流れていって

新しい命の道筋を作っていった。

他の生き物の肉を溶かして

飲み込むような恐ろしい生き方を

生み出す水の溜まり場が生まれることもあった。

もっと悲惨な水の世界もあったけれども、

長い年月をかけて様々な気持ちが溢れ出して、

それらを壊すように洗い流すことで

より穏やかな水の世界に姿を変えていく。

僕は褐色の背中とオレンジ色のお腹を

交互に水面に向けながら狭い水路の一つを泳ぎ

実家の裏庭の泉に通った。

 この世界で僕は限りなくイモリに似た形を

していたから、水路ですれ違ったり、

池や湖の様な水の溜まり場で出会う

生き物たちは、僕をイモリ君と呼んだ。

僕は、網の目の様な水路で繋がった

水の世界で出会った人々を注意深く見ていた。

僕がイモリみたいであるのと同じく

形は人でなくても、皆、中身は人だった。

人という共通の体ではなかったから、

行動を見るだけでその人の意図することを

理解することは比較的容易い。

逆に見て分からない場合は、絶対に分からなかった。

見たままをそのまま理解するか、しないのか、

ただそれだけだった。

馴れない水の中で、生き方を学ぶことは

ただひたすら真似る意外に選択の余地はなかった。

僕自身がイモリという身体に慣れていなかったから、

相手が蛙だろうが、亀だろうが、

タニシ、メダカ、ドジョウでも、

泳ぎ方や食べるものも真似た。

彼らは、彼女たちは、そんな僕を見て笑った。

こっちは必死なのに、何がそんなに

可笑しいのかというくらい笑い、

そして僕が去った後、考え込んでいた。

あの頃の僕は彼らの鏡だったのかも知れない。

僕としては、ただ水の世界に降りてしまえば、

本能的に実家の裏庭にある泉を目指している

だけだったから、そんな様子を気に留める暇も

なかった。

№6、メダカたちの世界

ずっと流されない水の溜まり場もあった。

強過ぎる思いは簡単には流れないから、

水路を人の姿のまま歩く者たちもいた。

個人の自我をそのまま持ち込むことは、

基本的に不可能なこの世界にその人の肉体を

かなり似たまま持ち込むことは恐ろしいほどの

執着を示していた。

嫉妬や憎悪の成分が強過ぎて、

濃い人の形をした影を持ち込むから

水路を安全に歩くことが出来ない。

そのような魂は、肉体が粗過ぎて水に触れると

火傷を負ってしまう。

水の世界なのに、強過ぎる自我は、

水に入ることが出来ない。

水路の脇にある狭い道を彷徨いながら

歩くしかない。

なぜ、水の世界に入り込むのかは

誰にも分からないけれども、

どんなシステムにも少しばかりの誤動作はある。

異なる世界の重なり合う部分は、

とても曖昧で間違いが起き易い。

水の世界の生じる間違いを正すのが、

美しく均等に太った女だった。

間違った者が入り込まないように

管理するために存在していた。

彼女は、限りなく他の世界と隣接していたから、

通常は人の形を保っていた。

水温が高くなると、気を失って川下の河原に

流されて行く。

そこには肉体を保った世界があって、

個人の自我を残したままの魂が生まれ直すことを

目指さずに限りなく人の肉体に近い姿で

活動していた。

何かが損なわれているから河原の世界に

いるのだけれども、そこの住人はお互いに

失われている一部について語ることは

タブーだった。

 たまに流されて来る美しく均等に太った女を

元の世界に戻すのは、やはり均等に太った

警察官の姿をした男の仕事だった。

隣り合った世界のつなぎ目を似たような場所で

二人の男と女が働いているのだ。

今は安定している二つの世界もより

大きな水が溢れ出せば流されて

消えるかも知れない。

それでもまたどこかで似た様な空間が

生まれるかも知れないし

そうでないかも知れない。

イモリの形をした僕が行くべく世界は

美しく均等に太った女が面倒を見ている

水の空間だった。

自由自在にどこにでも流れていく水は

隅々まで記憶を運ぶことを

主な仕事としていた。

無数の水の生き物たちがそれぞれに

限りなく小さな欠片を運んでいたから

運ぶ順番や届け先で記憶の意味は

幾らでも変化した。

誰かが自我を持つことで運ばれる言葉の意味を

変えることは許されなかった。

特にメダカたちは、わたしがわたしたちで

あるような規律を課せられていた。

僕には、この世界の全体を知ることは、

出来ない。

僕は、この世界では、身体が大き過ぎた。

それでも、自分が属する集団が運ぶ

センテンスの一部でも把握出来れば

十分だったし、その意味が分からなくても

何も問題はなかった。

わたしが思うことはわたしたちが

思っていることであったし、

その逆も同じだった。

美しく均等に太った女は、この頃の僕には

まだ何もさせずにいたから、毎日、

無表情に泳ぎ続けるメダカたちを

ただ眺めていた。

№7、あの子

メダカ一匹で意味のある言葉を運ぶことは

無理だった。

小さなわたしたちは、単語すら運べなかった。

限りなく分割された文字の一部を運んでいたから、

音さえも響かなかった。

運ぶ順番を間違えれば意味をなさなくなるから、

わたしたちの行動は操られると

言っても過言ではない。

わたしたちの意識の片隅に男女の別は

あったけれども、泉の中で言葉の欠片を運ぶ

わたしたちには雄雌の区別はなかった。

唯一の違いは身体の形だけだった。

身体そのものが、文字の一部を運ぶ器だった。

それぞれの集団が一つの文字になり、

更に大きな群れとなって意味になった。

それぞれの命自体が泉の記号とも言えた。

泉の世界を創り出している思念を

無限に拡張するようにメダカたちは、

泳ぎ続ける。

実際は美しく均等に太った女の思いを

映し出す鏡なのかも知れない。

再生と破壊、出会いと別離を繰り返しながら、

泉の世界を支え続けていた。

 美しく均等に太った女は、異なる形の命を

巧みに導くことで、世界を更新し続けていた。

まだ形しか個性のない小さな命は、

美しく均等に太った女の自我に

従うことで秩序正しく調和していた。

自分という意識が限りなく希薄な

小さな命も亡くなったり、

言葉の欠片を運ぶ過程で融合して

離れられなくなってしまう

者たちもいた。

それは泉の世界に入口と出口があることや

様々な種類の水路があることを意味していた。

より複雑になることで、少しずつ命は違う意味を

抱える場合もあったし、より別れていくことで

異なる命が目覚めることもあった。

しかし小さな命も一方的に

操られているわけではなかった。

そのような出口として僕はこの世界に

招かれたのかも知れない。

イモリの姿をした存在は、僕しかいなかった。

全てが同じように見えるメダカたちの中から

無意識にあの子を見つけ出そうとしていた。

あの子って誰だ。

№8、記憶の中のあの子

思い出せない光景を真っ直ぐに見つめる。

イモリの僕とメダカのあの子は畦道を駆けて

防風林に囲まれた屋敷の前に立ち止まる。

右手には青々とした稲の苗が整然と並ぶ角を曲がると

小さな祠があった。

その中には小さな石に彫られた道祖神が

祀られていた。

僕たちが手放すより仕方なかった記憶から

生まれた僕らだから、時折、記憶がもつれて

ケンカをした。

 何かが透けて見えるのに、正しく記憶の欠片を

調和させないと、それ以上前に進めなかった。

空間が広がらずに壁のように空気が立ち塞がって、

そこで行き止まりになる。

そんな時、僕らはいつまでも言葉を交換した。

どこかに無造作に放り込まれた欠片は、

棚や引き出しに整理されているわけでは

なかったから、必要なものを見つけ出すだけでも、

同じ場所をぐるぐると歩いたり、同じ会話を

重ねなければならなかった。

僕らはこの世界では限りなく不確かで、曖昧だった。

消えないでいるためにお互いを必要としていた。

泉を見付けて水の中の僕の命が動き始めたように、

あの子をこの世界で確かな存在にするために、

あの子の出入り口を僕自身も知る必要があった。

僕たちをより確かな存在にするために、僕の泉と

あの子の池を繋ぐ道を見出さなければならなかった。

メダカの池は山腹にあって、その中には

巨大な樹木の先端が水底に向かって

高く深くそびえ立っているらしい。

根は水面にあるのだろうか?

そうだとすれば、水面から樹の根を辿って

どこまでも青い水底に向かって伸びていく樹の先端を

知らなければならない。

僕はあの子の言葉の欠片だけを頼りに

池のある山を探す。

1匹の魚になってしまったあの子を見つけ出すまで

僕はこの不自然な自然を彷徨った。

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