ちからいっぱい羽ばたいた

もう左脚が動かない。

いや、左腕も動かない。

違う、左半分が動かない。

喉が渇いた。

猛烈に渇きを覚える。

何でも良い、何か水分が欲しい。

俺の左半分よ、動いてくれ。

水が飲みたい。

液体だったら何でも良い。

乾き過ぎて全身が、熱い。

内臓が焼けるようだ。

何かが俺を見つけた。

全身にエネルギーが流れる。

俺は立ち上がった。

バケツみたいなものに顔を突っ込んで飲めるだけ飲んだ。

そして再び意識を失って動けなくなった。

もう体が動かない。

それでも全身を心臓にして呼吸を続けた。

生きたい。

まだみんなと一緒にいたい。

みんなって誰だ。

何だか分からなくなってきた。

誰かが俺の口元に水を流し込もうとしている。

しかし口が動かない。

少し飲み込めたかも知れない。

でももう分からない。

また放置された。

俺は傾いたまま転がっている。

何かが、温かい何かが俺の全身を包んでいるような気がする。

大きな手のひらが俺の全身を包んでいる。

あったかい。

あったかいなぁ。

俺はどんどん浮き上がっていく。

肩甲骨辺りがまるで翼のように羽ばたいた気がした。

俺は自由になった。

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