彼の物語(正義感と告発)

彼は、正義感の強い美しい青年だった。

彼は、良き表現者として美しくあろうと努めたけれども、

自分自身のことを美しいと思っているようなナルシスト

では、なかった。

そういった意味では、彼の先輩の方がはるかにナルシスト

だと言えるだろう。

彼の正義感は、マクラ活動に対する忌避感ではなく、誰にでも

話せないような、話しても信じてもらえないようなことに

向けられていた。

彼が愛した国は、まるで誰かの錬金術の装置だと彼は、気が

付いてしまった。

彼が愛した国を支配する者たちは、国を切り売りしながら、

その手数料で豊かに暮らしていることに彼は、気付いたのだ。

彼の正義感は、それを善しとは、しなかった。

彼が愛した国が、他国に支配されていることを知らしめようとした。

善意や幼い命が他国の利益として吸い上げられていくことを

黙っていること等、選択出来なかった。

ましてや、それに関わり続けることは、あり得なかった。

彼は、28歳の時に狙われて亡くなるはずだったけれども、

理由があって生かされていた。

しかし、誰にも話さないように常に監視されていた。

仕事中は、当然、自室もプライベートも、彼に探りを入れる女性が

何人も近づいて来た。

彼女たちは、彼がもうすぐ亡くなることを知っていた。

彼が、普通では、考えられない亡くなり方をすることを知っていた。

そのような猶予期間の中で、彼を本当に庇う人たちが、ひっそりと

亡くなっていった。

彼が愛した国で錬金術を行っている側には、法律もルールも適用

されないことを多くの人が知っていたから、それでも従わない彼の

正義感を馬鹿にしていた。

彼は、亡くなった後で中身を抜かれる前に裸の写真を撮られて

配られた。

その写真を見て大騒ぎしながら、笑った人間たちもいた。

彼が愛した国は、絶望的なくらい、他国の錬金術に利用されている。

彼の正義感は、それら一切に対する拒絶だった。

多くの人は、彼が自ら人生の幕を降ろしたと思っているかも知れないが、

そうではない。

錬金術の仕組みを語りそうな者は、生かされないというルールによって

不本意ながら消されてしまったのだ。

彼は、他の人と協力して告発しようとしていたからこそ、とりわけ

残酷な死を与えられた。

そして、まるで、さらし首のように罪人として飾られている。

錬金術の仕組みを破壊しようとする者は、残酷な死を迎えるということを

知らしめるために死後も働かされている。

彼の正義感は、このような間違った世界を正すためのものだった。

彼は、間違ったルールと、これから多くの人に訪れる不幸に対して

警告を与えようとしていた。

彼は、錬金術側の世界に対抗するためのグループを作ろうとしていた。

彼は、まるで仕事の利益を守るために奔走していたと誤解されているが、

彼が本当に守ろうとしていたのは、彼が愛した国の利益だった。

彼が愛した国の人々が家畜のように狭いケージの中で、お金を産む

装置にされないために、イマジネーションを喚起しようとしていた。

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