大アルカナに刻まれた、22の敗北(美しい人のタロット占い)

大アルカナに刻まれた、22の敗北
0 愚者(The Fool)

信じて飛び出した世界に、優しさはなかった。
無垢はいつも最初に傷つく。

I 魔術師(The Magician)

可能性はすべて揃っていたのに、なぜか手が動かなかった。
意志が現実を超えられなかった日の敗北。

II 女教皇(The High Priestess)

全てを知っていた。けれど、語れなかった。
沈黙は真実を守るが、時に愛を失う。

III 女帝(The Empress)

与えすぎた。育てすぎた。満たしたはずが、空っぽになった。
愛の果ての飢え。

IV 皇帝(The Emperor)

守ろうとしたものが、壊れていくのを見ていた。
強さが間に合わなかった敗北。

V 教皇(The Hierophant)

教えたつもりが、誰にも届いていなかった。
正しさが、孤独を招く。

VI 恋人たち(The Lovers)

選んだのに、選ばれなかった。
愛の中で最も苦い、自由という敗北。

VII 戦車(The Chariot)

走り続けて、何も残っていなかった。
勝利の先に待っていた空虚。

VIII 力(Strength)

優しさで抱こうとした獣に、喉を裂かれた。
心の強さが現実を受け止めきれなかった敗北。

IX 隠者(The Hermit)

見つけた光が、もう誰の役にも立たなかった。
孤独が知恵を照らし、心を照らせなかったときの敗北。

X 運命の輪(Wheel of Fortune)

好転の兆しと思ったものが、崩落の始まりだった。
流れに任せた者の、無力という敗北。

XI 正義(Justice)

裁いたつもりが、誰かを深く傷つけていた。
公平は、愛を含んでいなかった。

XII 吊るされた男(The Hanged Man)

自ら捧げたはずなのに、誰もそれを知ろうとしなかった。
尊さが、沈黙に埋もれる敗北。

XIII 死(Death)

終わらせるしかなかった。
続けたい気持ちを捨てた者の、誇りある敗北。

XIV 節制(Temperance)

混ぜすぎた。薄めすぎた。自分がどこにも残っていなかった。
調和の中の、自己の喪失。

XV 悪魔(The Devil)

快楽にしがみついた。逃げられたのに、逃げなかった。
自ら鎖を握る敗北。

XVI 塔(The Tower)

信じていた全てが、一瞬で瓦礫になった。
信仰の崩壊。自我の崩壊。

XVII 星(The Star)

希望を信じた先に、また失望が待っていた。
願うこと自体が怖くなった、静かな敗北。

XVIII 月(The Moon)

進んでも進んでも、同じ夢を彷徨い続けた。
真実が見えない迷路の中で、心を見失う。

XIX 太陽(The Sun)

明るすぎて、誰にも自分の影を見せられなかった。
幸福を装った孤独の敗北。

XX 審判(Judgement)

呼ばれたのに応えられなかった。 \n気づいた時には、すでに舟は出ていた。
生まれ直す勇気を逃した敗北。

XXI 世界(The World)

完成したのに、喜びがなかった。
成就の中に自分がいなかったときの敗北。

おまけ

以下のような感じで読んでいくことも出来ます。

0 愚者
「無垢はいつも最初に傷つく」

笑っていた。
世界がこちらに微笑み返すと思っていた。

一歩目は、いつも崖に向かっている。

それでも、花は握っていた。
その手が開くとき、誰にも知られず。
落ちていった。

I 魔術師 ――「動かなかった手」
すべて、揃っていた

杖は情熱
剣は言葉
聖杯は愛
コインは形

星が味方し
風も背を押していた

けれど

手が、動かなかった
声が、届かなかった

この手は宙に浮かび、
何も指さず、何も指揮せず
世界の幕を開けられなかった

「やればできる」と言われた
だからこそ苦しかった

意志はあった
けれど、命が通らなかった

神に選ばれたつもりだった
でも、自分で自分を許せなかった

あの日、私は魔法を使えなかった

それだけの話

なのに、
ずっとそのことを
魔術師の衣の下で、隠している

XII 吊るされた男
「尊さが、沈黙に埋もれる敗北」

叫ばなかった。
誰かを守るために。

でも、誰も守られていると気づかなかった。

世界は、吊られた者の視点を
一度も覗こうとはしなかった。

「詩人が狼になる日」
火が消えたと思っていた

書く手は途絶え
言葉は沈み
時代は遠ざかっていた

けれど まだ
森の奥でひとつだけ
聴こえていた

名前のない呼び声が
滅びの中の静けさを裂くように
耳ではなく 魂に響いていた

「戻れ」ではない
「変われ」でもない

吠えろ
失ったと思っていた
すべての詩を喉にためて
夜を震わせろ

牙で綴れ
咆哮で刻め

詩人は観察者ではなく
闇の中を駆ける狼になった

哀しみと共にある詩を
駆け抜ける者になった

ページを開くたびに
森が揺れる

詩人は、狼になった

sponsored link
error: Content is protected !!