ある薄暗い夕方、山の中の古びたトンネルが不気味な静寂に包まれていた。その場所は、地元では「幽霊トンネル」として知られており、何十年も前に起きた謎めいた事件が原因で、噂が絶えなかった。
主人公はImori、物語タロット占い師である彼は、不思議な力を持つタロットカードを使い、未知の世界や魂の声にアクセスすることで人々の悩みを解決している。ある日、一人の若い女性がImoriの元を訪れた。彼女の名は玲奈。玲奈は幼少期にそのトンネルで恐ろしい体験をし、それ以来、夢の中に現れる幽霊に悩まされていた。
玲奈の話を聞いたImoriは、タロットを通じてトンネルの真実を探ることを決意する。彼が選んだカードは3枚。最初に出たのは**月（The Moon）**のカードだった。このカードは恐怖や幻想、未知の世界を象徴する。次に現れたのは**カップの6（Six of Cups）**。これは子供時代の記憶や過去の出来事へのノスタルジアを示す。そして最後に出たのは**死（Death）**。終わりと再生、変化を意味するカードである。
カードが示すのは、玲奈の恐怖が過去に起きた出来事と深く結びついていること、そしてそれを乗り越えることで新たな道が開かれる可能性だった。
Imoriは玲奈を連れて、トンネルへと向かう。日が沈み、闇が広がる中、二人はトンネルの入り口に立った。霧がかかり、冷たい空気が肌を刺すようだった。玲奈は震えていたが、Imoriの穏やかな声に励まされ、一歩ずつ進んだ。
トンネルの中では、不思議なことが起き始めた。子供の笑い声が遠くから聞こえるように感じられたり、壁に映る影が奇妙に揺れ動いたりした。そして、トンネルの奥で玲奈が突然立ち止まった。
「ここです……あの時、見たのは。」
玲奈の指さす先には、古い壁画が描かれていた。それは一人の女性が子供を抱きかかえている姿で、彼女の目は悲しみに満ちていた。玲奈はその絵に見覚えがあった。
その時、不意に子供の姿をした幽霊が現れた。白い光に包まれた少年のような姿をしたその幽霊は、玲奈をじっと見つめた。
「怖がらないで。」少年の幽霊が柔らかく微笑みながら言った。「僕はあなたを助けるためにここにいるんだ。」
玲奈は驚きと恐れで体を強張らせたが、Imoriがそっと肩に手を置き、少年に話しかけた。
「君はこの場所に縛られているんだね。でも、どうして玲奈を助けたいと思ったんだい？」
少年は寂しそうに微笑みながら、玲奈に視線を戻した。
「僕は昔、このトンネルで彼女を見たんだ。泣いている彼女を。僕がここから出られる理由を、彼女が知っている気がして。」
少年の言葉に、玲奈は涙を流し始めた。「あの時……あなたが私を守ってくれたの？」玲奈の記憶が蘇った。子供の頃、トンネルで迷った時に、不思議な声が彼女を出口へ導いたことを思い出した。
Imoriはタロットを取り出し、最後のカードを引いた。それは**カップのページ（Page of Cups）**だった。このカードは若い魂や純粋な感情、そして新たな始まりを象徴する。
「玲奈、この子はあなたを守るためにここに留まっていたんだ。でも、今度は君が彼を自由にする番だ。」
玲奈は深く頷き、少年の幽霊に向かって言った。「ありがとう。そして、もう大丈夫だよ。あなたは自由になれる。」
その瞬間、少年の幽霊は柔らかな光に包まれ、消えていった。トンネルを覆っていた冷たい空気が温かな風に変わり、玲奈は安堵の笑みを浮かべた。
Imoriは微笑みながら、玲奈に言った。「あなたの勇気が、この場所を癒したんだ。これからは新しい物語が始まるね。」
その夜、トンネルには静けさが戻り、玲奈は初めて安らかな眠りについた。Imoriの幽霊タロットは、また一つの物語を解き明かし、癒しをもたらしたのだった。