二つの顔を持つ王国と美しい若者
むかしむかし、この地には二つの王国があった。一つは、遠くの大国に仕え、煌びやかな装飾を施した城を持つ「白金の王国」。もう一つは、民を従わせることを是とし、重厚な城壁に囲まれた「鉄の王国」である。
どちらの王国も、それぞれの理に従い、争いながらも均衡を保っていた。
そんなある日、どちらの王国にも必要とされる美しい若者が現れた。美しい若者は、誰の下にもつかず、ただこの国の未来を守ろうとしていた。しかし、白金の王国は彼を黄金の塔の頂に迎えようとし、鉄の王国は彼を封じ込めようとした。
美しい若者はどちらの道も選ばなかった。彼は、ただ澄み渡る空を見つめ、祖国の行く末を案じていたのだ。
あるとき、彼は高き殿堂へと招かれた。そこでは、金の仮面をつけた賢者たちが、彼に語りかけた。
「お前には、この世界を動かす鍵を授けよう。だが、それを手にするには、いくつかの誓約をしなければならぬ。」
旅人は、その申し出を断った。
そして、静かに大地を踏みしめたその瞬間、雲が裂け、天を仰ぐことが叶わなくなった。人々の耳には、彼がかつて語った詩も歌も届かなくなり、彼の名は、風に紛れていった。
しかし、彼が消えた後も、王国の大広間では語られる。
「なぜ彼は、黄金の冠を拒んだのか」
「なぜ彼は、鎖を断ち切ることを選んだのか」
それは今も風の中に残る問いであり、答えを知る者はもういない。
寓話が示唆する内容
この寓話が示唆しているのは、単なる対立構造ではなく、より深い「支配の仕組み」や「選択の意味」、そして「知りすぎた者の運命」についての洞察です。以下にその核心をまとめます。
1. 対立する勢力は、実は同じ大元につながっている
「白金の王国」(🐼の広告塔)と「鉄の王国」(庶民を奴隷と見る勢力)は、一見異なる価値観を持っているように見えるが、実際には同じ「大元」に支配されている。
両者は異なる役割を果たしながらも、最終的には同じ勢力に従っている。そのため、どちらの側に立っても、本質的な変革は起こらない。
2. 美しい若者は、どちらにも従わなかった
美しい若者は、支配の枠組みの中で高い地位を得ることも、従属することも拒んだ。
彼の目的は「ただ国を守ること」であり、個人的な利益や権力には興味がなかった。
その結果、「どちらの陣営からも必要とされる存在」になったが、同時に「どちらからも警戒される存在」となった。
3. 真実を知った者は排除される
旅人は「金の仮面の賢者たち」から重要な秘密を知らされる機会を得たが、それを受け取らなかった。
その選択の結果、彼は姿を消し、人々の記憶からも消されることになった。
これは「知りすぎた者」の典型的な運命であり、彼が語った真実が封じられたことを示唆している。
4. 「誘い」とは単なる嫌がらせではなく、大きな転機だった
旅人が誘われたのは、単なる名誉職ではなく、世界の秩序に関わる「より高い地位」であった。
これは、「一度その枠組みに入れば、二度と抜け出せない」ようなものだったのかもしれない。
それを拒んだことで、彼は「知りすぎた者」として排除された可能性がある。
5. 表向きの対立や改革は幻想であり、本質的な構造は変わらない
「男系 vs 女系」の対立や、改修工事の資金の流れなどは、本質的な問題の核心には触れていない。
それらは、支配の構造を維持するための「舞台装置」に過ぎず、実際の支配層がどこにあるのかは明かされない。
つまり、「何を信じるか」「何を正義とするか」の選択を国民に委ねるように見せながら、実際には「どの選択をしても、本質的な支配は変わらない」仕組みになっている。
6. 「3本のビデオ」とは、仲間に入るための試金石だった
カントクから渡された「3本の映像」は、「理解できるかどうか」のテストであり、理解した者だけが仲間として迎えられるものだった。
旅の途上の美しい若者は、その意味を理解出来ないふりをし、返したことで「仲間にはならない」と意思表示したと判断された。
これは「組織に入るためには、一定の知識や思考を共有する必要がある」という構造を示している。
結果的に、彼は「内部に入らない者」となり、排除される理由の一つになった。
支配の枠組みは複雑に見せかけて、実は単純な構造をしている。
国を守るために行動する者は、どの勢力にも属さないため、最も危険な存在と見なされる。
しかし、本当の選択肢は、「支配の枠組みに入る」か「それを拒否して消される」かの二択しかない。人々に与えられる「対立構造」は、実は幻想に過ぎず与えられる役割に過ぎない。本質的な支配は変わらない。知りすぎた者は、記憶から消される。
「吊るされた男(The Hanged Man)」
美しい若者は、どちらの王国にも属さず、支配の構造を見抜いていました。しかし、その結果として、あらゆる「行動を封じられ」「人々の記憶から消される」運命を辿りました。これは、吊るされた男が自ら動きを止め、別の視点から世界を眺める姿と重なります。
美しい若者は、自分の利益や栄光のために動かず、ただ「国を守る」ことを願っていました。しかし、その選択によって最終的に彼は姿を消します。この物語には「自らを犠牲にしてでも、真実を守ろうとした者の覚悟」があり、それは吊るされた男の象徴するテーマと合致します。美しい若者は、金の仮面の賢者たちの誘いを拒み、支配の枠組みに入らない道を選びました。その結果、彼は「行動の自由を奪われる」ことになります。これは、吊るされた男が試練の中で新たな視座を得る過程を表しています。この物語において、吊るされた男は「支配に抗う者の沈黙」「見えざるものを知る者の運命」「意図的な沈黙がもたらす新たな悟り」を象徴していますが、彼の見識が、そのまま語られることは、ありませんでした。そういった意味では、この吊られた男のカードは逆位置でしょう。