最悪を想定していないと落ち着かないときに、起きていること
責任が大きい案件を任されたとき。
公開前、提出前、発表前。
あるいは、大事な判断をしなければならないとき。
頭の中で、最悪の展開が自然に浮かびます。
「ここでミスしたらどうなる?」
「もし炎上したら?」
「想定外が起きたら?」
「自分の判断が間違っていたら?」
まだ何も起きていないのに、
すでに後処理まで考えている。
これは悲観的だからではありません。
むしろ、守ろうとしているからです。
最悪を想定することで、事故を防ぎたい。
失敗を減らしたい。
被害を最小限にしたい。
その姿勢自体は、能力でもあります。
ただ、ある地点を超えると、
最悪想定は安全装置ではなく、
消耗装置に変わります。
この話は、その構造についてです。
今回扱う固定点
今回扱う固定点は、これです。
「最悪を想定しておけば安全」
最悪を先に考えておけば、不意打ちを避けられる。
考えられるだけ考えておけば、守れる。
この位置に立っていると、
最悪想定は“保険”になります。
不安を軽くするための行為。
安心を得るための確認。
ただ、問題はそこではありません。
最悪想定そのものが悪いのではない。
最悪想定が“常駐”していることが、消耗を生みます。
守るために考えているのに、休めない
最悪を想定している間、
不思議と「やるべきことをやっている感覚」があります。
備えている。
抜けを探している。
責任を果たしている。
その感覚があるから、
手放しにくい。
最悪を考えなくなったら、
どこかで見落とすのではないか。
油断した瞬間に事故が起きるのではないか。
そう思うと、想定を止められない。
でも、想定を広げれば広げるほど、
想定外も増えます。
「もしこれも起きたら?」
「このケースは?」
「この人がこう動いたら?」
想定は連鎖します。
想定が増えるほど、
「まだ足りない」という感覚も増えます。
そして最悪想定は、
点検ではなく常駐になります。
昼も夜も、
頭のどこかで動き続ける。
終わらない安全確認。
守るために考えているのに、
考え続けることで休めなくなる。
ブラックホールの仕組み
この固定点の厄介なところは、
考えている限り「安全に近づいている感覚」があることです。
だから止められない。
最悪を想定する
→ 抜けを見つける
→ さらに想定する
→ まだ足りない気がする
→ 想定を増やす
安全のために始めた想定が、
常に危険を探し続ける状態に変わる。
そして、常に危険を探していると、
世界は危険だらけに見えます。
これは性格の問題ではありません。
責任が大きい人ほど、
この回路は強くなります。
自分の判断が、
誰かの損失や評価に直結する。
だから、最悪を考え続ける。
それ自体は誠実です。
ただ、誠実さが24時間稼働すると、
身体がもたない。
消耗の正体は「常駐」
ここで起きている消耗の正体は、
ネガティブ思考ではありません。
最悪想定が“常駐”していることです。
本来、最悪想定は「点検」です。
点検は、時間を区切って行うもの。
でも常駐すると、
いつでも、どこでも、
危険のスキャンが続きます。
夜に思い出す。
入浴中に浮かぶ。
寝る直前に再起動する。
点検が、居住空間になっている。
最悪想定は、
住む場所ではなく、
一時的に入る部屋のはずです。
立ち位置をずらす
ここで必要なのは、
最悪を考えるのをやめることではありません。
やめようとしても、止まりません。
やるのは、ほんの少しの位置変更です。
最悪想定を、
時間制限付きの点検にする。
常駐させない。
たとえば、
「今から10分だけ、最悪を洗い出す」
「ここまで出たら一度閉じる」
「今日はここまで」
最悪想定を、
作業に戻す。
ずらしの最小文を置きます。
最悪想定は、時間制限付きにする。常駐させない。
考える力を失うわけではありません。
必要なときに、
点検として使う。
終わったら、部屋を出る。
ずれた後に起きる変化
このずらしを入れても、
責任は消えません。
最悪もゼロにはなりません。
ただ、オンとオフが生まれます。
備えている時間と、
休んでいる時間が分かれる。
常に危険を探している状態から、
必要なときに探す状態へ変わる。
夜の再起動が減る。
反芻が短くなる。
「まだ何かあるはず」という感覚が、
少し弱まる。
安全装置が壊れるのではありません。
安全装置が、常時警報モードから、
点検モードに戻るだけです。
ここでやっていること
ここでやっているのは、
楽観になることでも、
「大丈夫」と言い聞かせることでもありません。
固定されて消耗している一点から、
ほんの一歩ずれるための言語化です。
最悪を想定する力は、
あなたの能力です。
ただ、その能力を
住居にしない。
点検として使う。
それだけで、
消耗はかなり変わります。
最後に
もし今、
最悪の展開が頭から離れなかったなら、
それは、あなたが無責任だからではありません。
守ろうとしているからです。
ただ、守るための想定を
24時間続ける必要はありません。
最悪想定は、常駐させない。
点検として使う。
それだけで、
少しだけ、休める時間が戻ってきます。
