彼女の物語(親友)

今、思えば、彼女に少しずつ冷遇の影が忍び込み始めた時に

彼女は、まったく畑違いの女性と仲良くなっていた。

影が実体化し、様々な問題が彼女を悩ませ始めた頃には、

すっかり、その女性は、親友になっていた。

彼女は、親友のお陰でどれだけ気持ちが救われたか、

分からない。

再婚の相談をした時も、誰よりも理解し応援してくれた。

彼女は、残念ながら亡くなってしまったけれども、親友は、

何やら出世したようだ。

彼女は、身体から剥がされた時の苦痛が強過ぎて今も上手く

飛べないでいるというのに、親友だった女性は、かなり

ランクが上がったようだ。

もうドタバタと走り回る必要もないだろうし、すっかり

上流の方たちと親しい間柄になっている。

親友の出世は、彼女が亡くなったお陰だということを誰も

知らない。

恐らく誰も知ることがないまま、不思議な活躍を重ねてく

のかも知れない。

しかし、その活躍は、表向きではないから、やはり誰にも

知られないかもしれない。

彼女は、亡くなってから、あの世への水先案内人の役割を

するタイプの人たちを知った。

案内人と言っても、どこかに誘導するわけではない。

ある世界の人たちが見守る必要がある人たちを親友に観察させ

報告させるだけの簡単な役割だ。

彼女は、亡くなってから、全てを悟ったけれども、それを

誰かに伝える手段がないままでいる。

彼女は、彼にも同じ役割の人間が張り付いていたことを

知ることは、出来ない。

不本意な状態で亡くなるということは、自由になることではなく、

苦しみの意識の中に閉ざされてしまうことだ。

彼女の親友は、特別なことをしたわけではないから、彼女は、

余計に混乱したままでいる。

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