彼女の物語(写真)

彼女の視野は、突然、真っ暗になった。

そして手短に何故、自分がこれから、どんなことになるのかを

聞かされた。

手際よく何かを「ウ」たれて朦朧としている間に殴打された。

彼女の人生は、唐突に幕を下ろした。

彼の時とまったく同じだった。

既に亡くなっているのだから、救急搬送する必要はない。

人目に触れないように、騒ぎにならないように速やかに

事務処理されただけだった。

長男の父親は、何となく経緯を知っているから、引き取りたい

と思った。

しかし夫は、真実を知られることを恐れて他人の子供を

育て続ける。

彼女は、何をどこで誤ったのか?

彼とコミュニケーションを取っていたからだけではない。

彼女の周囲も年単位で既にブラックボックス化していっていた。

何が起こっても誰にも分からないようになっていった。

自宅で何が起こっても起こらなくても疑問に思わないことに

なっている夫が彼女の亡くなる数年前に近づいてきたように、

彼女と不釣り合いな親友が出来たように、次第に彼女は、

見えない鎖で縛られていった。

真っ暗の中で彼女だけが透明になっていった。

彼女は、公開されなかっただけが救いだった。

それは、別に温情ではない。

彼女を連れて行った存在が、彼と同じだったから、そうなっただけだ。

彼女には、その手配をすることが出来なかったのだ。

彼女は、心配している。

私と血が繋がっているという理由で、いつか、子供たちが出世の

ために捧げられるのではないかと。

彼女は、彼女で知っていたから、彼の話を信じることが出来ただけだ。

別に彼が一方的に相談したわけではない。

美しい彼女が壊された姿を彼らは、写真に収めた。

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